悪性リンパ腫になってました

日本では少ない古典型ホジキンリンパ腫についてまとめていきたいと思います。

ABVD療法とA+AVD療法

咳が止まらず検査中だった私に下された病名は、悪性リンパ腫のうち「古典的ホジキンリンパ腫」といわれるものでした。

この古典的ホジキンリンパ腫は進行度合いにより、I期からⅣ期に分類され、治療方針や予後が異なってきます。軽い順に、Ⅰ〜Ⅱ期を「限局期」、Ⅲ〜Ⅳ期を「進行期」となります。

私の場合、確認できる腫瘍の位置は胸部だけでしたが、「体重減少」と「腫瘍が大きい」ことから「進行期」と診断されました。

古典型ホジキンリンパ腫の治療

悪性リンパ腫には、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分けられます。欧米と異なり日本では非ホジキンリンパ腫に罹る率が高く、ホジキンリンパ腫の発生頻度は低くなっています。

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫は、このように分類されます。

ホジキンリンパ腫は、ホジキン細胞やリードステルンベルグ細胞という、リンパ球のB細胞由来の特徴的な腫瘍細胞が見られるリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫は、腫瘍細胞の形や性質、リンパ球のB細胞、T細胞、NK細胞のうちどの細胞ががん化したかによって、細かく分類されます。

もっと知ってほしいリンパ腫のことより引用

ここでは私が罹った、ホジキンリンパ腫も「限局期」と「進行期」では治療アプローチが異なります。

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「限局期」の場合は化学療法をを行ったのち、放射線治療も併用します。これに対して「進行期」の治療は化学療法を6〜8コース行うことが基準となります。

この化学療法とは、一般的には抗がん剤と言われる薬剤でがん細胞の増殖を抑制させたり破壊する療法です。ホジキンリンパ腫においては、「限局期」「進行期」でもまずはじめにABVD治療と言われる化学療法が選択されるのが一般的です。

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「もっと知ってほしいリンパ腫のこと」より作成

「限局期」のホジキンリンパ腫の場合ABVD療法を行ったのち、場合によっては病変部だけに放射線を当てる局所放射線治療を組み合わせます。「進行期」ではABVD療法を6〜8コース行い、PET-CTなどの画像検査で残存病変が認められた場合には、病変部に放射線を照射します。進行期ホジキンリンパ腫の方に放射線治療が最初に用いられない理由としては、「腫瘍が大きい」「広範囲に広がっている可能性がある」といった理由から、まずはカラダ全体に抗がん剤を回してがんをやっつけるということのようです。放射線治療はピンポイントな部位の方が効率的ですからね。

ABVD療法とは

私が罹った進行期のホジキンリンパ腫の治療では、ABVD療法という化学療法が行われるのが標準です。ABVDとはその治療に用いられる4種類の抗がん剤(アドリアマイシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジン)の頭文字から命名されました。

それそれの薬剤の役割(効能)は、このようになっています。

アドリアマイシン(ドキソルビシン)…がん細胞のDNAに入り成長を止め死滅させる

ブレオマイシン…DNAの合成を抑えてがん細胞が増えるのを防ぐ

ビンブラスチン…がん細胞が増えるのを抑え、腫瘍を小さくする

ダカルバジン…がん細胞のDNAと結合し、DNAの複製を妨げる

このABVD療法は4週間を1コースとして、投薬(点滴)を2週間に1回行うサイクルで進みます。投薬しない日は、吐気止めや抗生物質などを服薬します。

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ABVD療法投薬スケジュール

A+AVD療法とは

2018年、分子標的薬のアドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン)が「未治療のCD30陽性のホジキンリンパ腫の治療」において保険適用されることになりました。それまでは、「再発または難治性」にしか適応されていませんでした。

このことにより、進行期のホジキンリンパ腫患者は効果的な薬剤を経済的負担を少なく享受できることとなりました。今回の私は、まさにこの対象です。

A+AVD療法とは、ホジキンリンパ腫治療の基準であるABVD療法のB(ブレオマイシン)をアドセトリスと入れ替える療法です。

このアドセトリス+AVD療法(A+AVD)とABVD療法のブレオマイシンと入れ替えることで

  • 無増悪生存期間の向上(82.1%→対照群77.2%)
  • ブレオマイシンを外す事により肺毒性の減少

といった効果が高まるデータがでました。

ブレオマイシンは、間質性肺炎や肺線維症などの副作用の報告もあり、この試験においては、グレード3以上の肺毒性が「アドセトリス+AVD」療法を受けた1%未満に、ABVD療法を受けた3%に発現したデータがあります。

無憎悪生存期間とは、治療中や治療後にがんが進行せず安定した状態である期間のことを言います。我々が気になるのは、がんの治療や治療後の生存期間(生存率)ですが、無増悪生存期間=生存期間ではありませんが、いい結果が出てます。

一方、好中球の減少や末梢神経障害の発現が多いことがわかっています。

治療のスケジュールは、ABVD療法と変わらず、4週間を1コースとした投与サイクルとなります。

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A+AVD療法投薬スケジュール

分子標的薬について

分子標的薬とは、がん細胞の表面にある特定のタンパク質や遺伝子を探し出し、その細胞だけに作用する薬のことです。

通常の抗がん剤は、がん細胞の破壊したり増殖を防ぐ働きをする強い薬なので、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまい、副作用が現れることが多くあります。分子標的薬はピンポイントに作用するので、体への負担が少ない薬と言えますが、全く副作用がないわけではないので注意が必要です。

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進行期ホジキンリンパ腫に用いられる「アドセトリス」は、遺伝子工学の手法で作られた抗体です。ホジキンリンパ腫の一部では、がん細胞の表面にCD30というタンパク質があります。このCD30のあるがん細胞だけに入り込み、薬剤を放ちがん細胞を攻撃するのが「アドセトリス」です。

アドセトリスの副作用について

アドセトリスも全く副作用がないわけではありません。

先に記したように、好中球の減少などが挙げられます。これは骨髄抑制と言われるもので、白血球や赤血球、血小板など骨髄で生み出されるものに影響が出る状態です。

免疫機能が低下することで、感染症にかかりやすくなります。また突然の高熱や寒気、倦怠感、息切れ、貧血、出血しやすい(あざができやすい)といったものも、骨髄抑制による影響と言えます。

また足先のしびれや痛みといった末梢神経障害も挙げられます。これは、薬剤が血流とともに全身を巡るためにおきると言われています。

この他にも吐気、下痢、便秘、脱毛なども主な副作用としてあるので、治療中何か気なる症状があれば担当医に相談してください。

費用に関して(薬価)

保険適用となりましたが、アドセトリスは高価な薬剤です。ABVDのブリオマイシンは4,699円(15mg)ですが、単純に薬価を比較するのはナンセンスですね。

ホジキンリンパ腫の寛解に向け、適切な治療法を選ぶのが重要です。

ちなみに今回私のA+AVD療法に用いられている薬剤の薬価は下記の通りです。(1回あたり)

  • アロキシ0.75mg 14,937円/瓶
  • ビンブラスチン(エクザール)10mg 2,680円/瓶
  • ドルソルビシン10mg(後発薬) 893円/瓶
  • ダカルバジン100mg 3,418円/瓶
  • アドセトリス50mg 474,325円/瓶

(この他に輸液なども点滴されましたが…)

抗がん剤は、対象者の身長や体重などの条件に応じて細かく投薬量が決められます。私の場合はアドセトリスを2瓶使用していたようなので、これだけでも100万円近くかかることになります。

実際に窓口で負担している治療費は、1回83,000円くらいで、2回目以降は数千円の負担ですみます。毎月結構な額を天引きされてますが、改めて日本の皆保険制度と高額医療費制度に感謝です!

 

※このサイトは、ホジキンリンパ腫となった私が個人的に集めた情報の故、かなり限られたものになります。必ず担当の医師や薬剤師にご相談ください。